〇不動産の名義変更の事なら不動産名義変更相談センターへお任せください
受付時間 | 8:30~20:00 土日祝日も事前予約 営業いたしております。 |
---|
運営元事務所公式LINEアカウントで問合せ・ご相談ご希望の方は→こちら
相続による不動産の名義変更をご検討の方はご参照ください。以下のページをクリックされますと該当のページをご覧になれます。
〇相続登記が義務化されます→こちら(2021/04/27更新)
〇相続登記の義務化の対象者は?→こちら(2022/09/08更新)
〇相続登記の義務化~3年以内に遺産分割がまとまらない場合~→こちら(2021/11/22作成)
〇相続登記の義務化が令和6年(2024年)4月1日から開始されます
→こちら(2022/02/22作成)
〇令和4年(2022年)4月1日から登録免許税の非課税措置が拡充されます
→こちら(2022/02/08作成)
〇第三者に知られずに相続登記できますか?→こちら(2021/03/30修正)
〇面談は1回で済みますか?→こちら(2021/07/07作成)
〇令和4年10月以降土・日・祝日も登記情報を取得できるようになります。
→こちら(2022/04/19作成)
〇相続登記を自分でされる場合の注意点→こちら
〇相続した不動産が未登記の建物である場合→こちら
〇相続した不動産に抵当権が付いている場合→こちら(2022/09/13作成)
〇登記できる建物の要件とは→こちら
〇課税明細書を利用する場合の注意点→こちら
〇遺産分割協議に期限はありますか→こちら(2021/04/06加筆修正)
〇遺産分割協議交渉の代理を依頼できますか?→こちら(2021/11/29作成)
〇実印を複数の相続人で共有できますか?→こちら(2021/12/14作成)
〇封印された遺言書を開封しても良いですが?→こちら(2021/10/01作成)
〇遺言書を無視した遺産分割協議は可能ですか?→こちら(2021/07/18作成)
〇被相続人の生前中に放棄できますか?→こちら(2021/10/29作成)
〇他の相続人から遺産分割協議書が送られてきた場合→こちら
〇配偶者に名義変更すると税金が少なくなるときいたのですが?→こちら
〇養子と相続税→こちら
〇相続放棄と相続税→こちら
〇死亡退職金と相続税→こちら
〇登録免許税の非課税制度について→こちら
〇相続した不動産を売却したいなら名義変更をお早めに→こちら
〇相続した不動産を贈与する場合の手続きの流れ→こちら(2021/06/11作成)
〇戸籍を郵送請求する場合は速達or普通→こちら
〇法定相続情報一覧図の交付を受けるメリットは?→こちら
〇遺産分割協議のやり直しには要注意→こちら
〇遺産分割の方法~換価分割とは~こちら
〇遺産分割の方法~代償分割とは~こちら
〇配偶者居住権とは→こちら
〇配偶者居住権のメリット→こちら(2021/05/17)
〇成人年齢の引き下げに伴う未成年者がいる場合の遺産分割協議→こちら(2021/06/10作成)
(注)施行日は令和6年4月1日になりました。
所有者不明土地に対する対策として、民法等の一部を改正する法律が2021年4月21日成立しました。その改正案の中で、特に重要な改正内容が相続登記の義務化です。今現在、相続登記の申請期限はありませんが、この改正案では、相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権
を取得した日から3年以内に相続登記を正当な事由がある場合を除いて申請しなければなりま
せん。そして正当な事由なく申請を怠ると10万円以下の過料に処せられます。さらに、重要
な点がもう一つあります。それは、施行日前に既に発生している相続についても適用されることです。施行日前に発生している相続については、経過措置として原則として施行日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。もちろん現時点で発生している相続についても同様です。改正法はおそらく2021年中に公布され、公布から3年を超えない日(2024年頃まで)に施行されます。従って、今現在、発生している相続については、遅くとも2027年までは相続登記をしなければ、過料に処せられる恐れが出てきますので、まだ相続登記が御済みでない方は早急に相続登記をしましょう。
相続等の義務化の対象となる人は、実際に相続する(名義人となる)人だけではありません。
実は、遺産分割協議成立前なら法定相続人全員が対象となります。つまり、自分が相続するつもりがないから関係ないと思ってのんびりしていると、3年を経過し罰則の対象となりかねません。従って、自分が相続するつもりはなくても、早めに遺産分割協議を成立させるように他の
相続人に促しましょう。
なお、3年以内に遺産分割協議が成立している場合の対象者は、遺産分割協議によって名義人となるとされた相続人となりますので、不動産を取得しない相続人は対象外となります。
また遺言書で特定の相続人に不動産を相続させると記載されている場合の対象者は、当該相続人のみとなり、他の相続人は対象者となりません。
相続登記の義務化(改正不動産登記法76条の2)が施行されると、相続が開始(又は施行日)されてから3年以内に相続登記を申請しなければなりません
では遺産分割協議がまとまっていない又は、遺産分割協議をしていない場合はどうすれば良いのでしょうか?
実は、今回の改正によって新たに、法務局へ登記名義人につき相続が開始したこと及び自己が
相続人であることを申出する制度(以下「申出」制度)が創設され、この申出制度による申出を3年以内にすれば過料に処せられません(改正不動産登記法76条の3)。
従って、遺産分割協議がまとまらない等の事情で、3年以内に相続登記を出来ない場合は、申出をすれば良いことになります。
但し、この申出制度については、施行日前の相続についても適用すると明文の規定がないため、施行日前の相続については、申出制度を利用することが出来ない可能性があるので、注意が必要です。
令和4年(2022年)現在、不動産の価格が10万円以下でかつ特定の区域内にある土地(主に市街化調整区域内)に限って、相続登記における登録免許税が非課税となっています。ただし現在の制度では、対象となる土地が限られており、かつ非課税となる額の上限が1筆あたり400円となっていることから相続登記の促進目的としては不充分とされてきました。そこで令和4年
4月1日以降非課税制度が拡充されます。拡充後は
不動産の価格が100万円以下の土地
であれば、市街化区域、市街化調整区域を問わず全ての土地における登録免許税が非課税となり、上限額も1筆あたり4000円となります。具体的には従前では対象とならなかった以下の土
地等が対象となります。
①市街化調整区域の面積が大きい農地
②市街化区域内の公衆用道路
③市街化区域内における土地の持分相続
→持分相続登記における不動産の価格は、土地全体の固定資産評価額に相続する持分を乗
じた額となります。例えば相続する持分が10分の1の場合、土地全体の評価額が1000万
円以下であれば非課税となります。
なお、施行日は令和4年4月1日以降となっていますので、4月1日までは上記の土地等の相続登記を申請しても非課税となりませんし、4月1日以降も還付されません。従って相続する不動産に上記の土地が含まれている場合は、4月1日以降に申請することも検討したほうが良いでしょう。また現時点では、この非課税制度は時限的な措置とされており、期限が令和7年3月31日
までとされております。
(注)この記事の内容は、現在(令和4年2月8日時点)国会に法案が提出された段階で成立し
ておりません。ねじれ国会ではないので成立はほぼ確実と思われますが、万が一不成立
となる場合も考えられますので予めご了承ください。
司法書士に守秘義務が課せられるため、業務上必要な場合(役所に戸籍の取り寄せ等)や依頼
者の同意がある場合を除いて、第三者に相続の事実を知らせることはあり得ませんので相続登記手続き中は第三者に知られることはありません。
しかし、相続手続き後も秘密にしておくことは不可能です。なぜなら、不動産登記情報は広く一般に公開されているからです。従って誰でも、手数料を支払えば登記事項証明書(登記簿謄本)を取得でき、取得者が相続した事実を知ることができます。
しかしながら、制度上は誰でも取得できるとはいえ、手数料もかかりますので、実際に定期的に登記事項証明書を取得しているケースが不動産会社の営業活動等に限られ、一般人が他人の土地の登記事項証明書を取得するケースは稀であると思われます。
従って、相続手続きしたことが不動産登記事項証明書の取得によって、親戚や知人等の第三者に知られる可能性は少ないと言えますので、そこまで神経質になる必要はありません。
不動産の調査でよく利用されているのが登記情報提供サービスです。登記情報提供サービスは
法務局の窓口や郵送で取得せずとも、インターネット上で登記情報を取得できる制度です。登
記情報は法務局の認証文は付与されないため、他の官公署に提出することは出来ないことが多
いですが、所有者等の確認ができるため相続登記の調査等に広く利用されています。この登記
情報提供サービスは現在は、平日のみしか利用できませんが、令和4年10月以降は、土日祝
日も利用できるようになります。なお令和4年10月以降土日祝日に取得できるのは登記情報
のみとなっており、公図・地積測量図等の図面情報は平日のみしか取得できませんのでご注意
ください。
相続登記を自分でされる方の中には、法務局の登記相談を利用しよう
と思っておられ方も多いでしょう。しかし、法務局の登記相談は登記
手続き案内に変わりました。登記手続き案内は登記相談といくつか
相違点があり、登記相談のように利用するにはいくつか注意点があり
ます。まずは次のページをご覧ください。
上記のページで、注意すべき点は
①完全予約制であること
→つまり、予約無で法務局に出向かれたとしても、予約が埋まっていれば
利用できないということになります。またお仕事が休みの日に行こうと
お考えでも休みの日が予約が満杯の場合は利用できないということになり
ます。実際に当事務所にご依頼された方の中にも、当初はご自身でしよう
と思い法務局に予約無でいかれたが、予約が埋まっていて登記手続き案内
を利用できなかったという方がおられました。
②申請書等は自宅等で自分で作成しなければならないこと
→登記手続き案内で、登記申請書を手取り足取り教えてもらいながら作成
したいと思っている方が多いでしょう。しかしながら上記のページにも記載
されているとおり、登記手続き案内では一般的な書き方にとどまり、申請書
等は自分で作成しなければなりません。
③申請書のチェックはしてもらえない
→登記手続き案内では、申請書のチェックはしてもらえず、チェックは申請を
受け付けてからということになります。従ってもし不備があれば、再度法務局
に行かなければならないということになります。
いかがでしょうか?以前の登記相談だと、担当官によっては相談にとどまらず、申請書
や戸籍等のチェックまで手取り足取り教えてくれたこともあるようでしたが、登記手続
き案内では、申請書の様式や一般的な説明にとどまり、申請書等の書類のチェックはさ
れなくなっています。このように制度変更された理由は、あくまでも私見ですが行政手
続きのオンライン化の推進に伴い、法務局もオンライン申請の利用を促進を促す事や、
法務局が書面申請の利用を減らして、人件費の削減につなげたいのではないかと思われ
ます。登記手続き案内に変更されてから、当事務所でも、当初、登記手続き案内を登記
相談のように利用されて自分で相続登記をしようと思われていた方からのご依頼が増え
ています。ぜひ、自分でしようか司法書士に依頼しようか迷われている方や、登記手続
き案内を利用したが、自分でやるのは不安に思われている方は、当事務所に依頼するこ
ともご検討ください。当事務所の相続登記の報酬は以下のページをご覧ください。
相続登記の報酬→こちら
相続する不動産に法務局に登記簿が備えつけられていない未登記建物(但し、不動産登記法上のの要件を満たしている建物に限る)が含まれることはよくあります。本来法律によれば建物を新築した者は1か月以内に、表題登記(建物の所在、家屋番号・種類・構造・床面積等を記録する登記)を申請しなければならず、違反した場合には10万以下の過料に処せられるとなっています(不動産登記法146条)
しかし、金融機関から借り入れをして自宅を建てる場合は、金融機関が担保設定する関係上表題登記をすることが求められますが、全て自己資金で建築した場合は、金融機関等の第三者から登記を求められることがありません。従って第三者から登記を迫られるということがないかため、登記の必要性を感じられないため、未登記のままにしておくことがあります。
また、罰則規定である10万円以下の過料規定も実際にはほとんど適用されていないことも未登記建物が発生する原因となっているとおもわれます。実際にいままで当事務所にご依頼・ご相談された方で、過料が科せられた方はいませんでした(ただし、今後空き家問題対策として厳格に運用し、過料を科していくとういう方向に変わる可能性はあります)
では、相続する不動産に未登記建物があった場合、登記をするべきでしょうか?これは未登記
建物を今後も継続的に活用していく可能性が高いかどうかを個々のケースで判断すべきでしょう。すなわち、
〇当該建物をすぐに取り壊す予定がある場合
〇将来、リフォームや売却する際に取り壊す可能性が高い場合
は、登記をするメリットがあまりないと言えますし、逆に
〇当該建物をすぐに取壊さずに継続的に利用する場合
〇将来、リフォームや売却する際に取り壊す可能性が低い場合
は登記するメリットが高いと言えます。なおこの建物表題登記を代理申請できる者は土地家屋調査士に限られていますが、当事務所には提携しております土地家屋調査士がおりますので、
建物表題登記はもちろん未登記建物が不動産登記上の建物要件をみたしているかどうかの建物認定をご希望の方でも対応できます。未登記建物の相続をお考えの方はお気軽に当事務所にお問い合わせください。
相続が発生した不動産の登記情報を取得すると、抵当権が付いていることが判明することがあります。但し、抵当権が付いているからといって、当該抵当権が効力を有しているとはかぎりません。抵当権の被担保債務は関西となっているにもかかわらず、抵当権の抹消登記手続きがなされずに放置されているという場合もあります。
抵当権が付いている場合の対処方法としては①完済済み又は相続を契機として完済予定の場合と②未完済で今後も返済を続けなければならない場合によって変わります。「相続を契機として完済予定」は、抵当権が民間金融機関提供の住宅ローンであった場合に良く起こります。住宅ローンの場合、ほとんどの民間金融機関では債務者が団体信用生命保険(団信)に加入を求められます。債務者がローン返済中に死亡した場合、残債分の金額、団信から保険金として支払われ、抵当権は消滅します。
①完済済み又は相続を契機として完済予定の場合
→完済済みの場合は、抵当権抹消登記に必要な書類が送付又は交付されているはず
ですので、被相続人の自宅等を捜索しましょう。見つからない場合は、書類を再発行
してもらう必要があります。
→抵当権が団信付の住宅ローンであった場合は、借入先の金融機関で所定の手続きを
とると、後日必要書類が送付されてきます。
→上記の手続きを経て、必要書類がそろったら、相続登記と同時に申請するのが一般
的です。
②未完済で今後も返済を続けなければならない場合
→この場合、抵当権抹消登記をすることは出来ませんので、まずは相続登記をしま
しょう。
→亡くなられた方が、抵当権の債務者の場合、抵当権者である金融機関から抵当権の債
務者変更登記をするように求められますので、指示に従って手続きを行いましょう。
未登記建物を登記しようと検討するにあたっては、当該未登記建物が登記できるかを判断する必要があります。未登記建物を登記できるかは当該建物が原則として、不動産登記法上の建物要件を満たしている必要があります。この不動産登記法上の建物要件は、固定資産課税台帳に登録される建物要件とは異なっていますので、固定資産課税台帳に未登記建物として登録されているからといって、全てが登記できるわけではないということに注意が必要です。
不動産登記法上の建物として認定されるための要件は、
①屋根及び周壁又はこれに類するものを有すること(外気分断性)
②土地に定着していて容易に動かすことができず、永続的利用されること
が予定されていること(定着性)
③その目的とする用途に供しうる状態にあること(用途性)
④その建物が独立して取引の対象となること(取引性)
の4つががあります。例えば、基礎工事をしないで、単にコンクリートブロックの上に置かれた物置は、②の定着性を有しないため、登記できません。
しかし、この4つの要件を満たしているかどうか容易に判断できないというような建物が実務ではよく散見されます。そのような場合は土地家屋調査士に、現場を調査してもらい登記できるか否かを判断してもらうことを推奨いたします。
当事務所には、提携している土地家屋調査士もおりますので、未登記建物の事でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
近年、自治体と法務局の連携が進み、相続登記に固定資産評価証明書の添付が必要ではなくなり、固定資産税の納税通知書に付属している課税明細書の写しを付ければ良いという自治体が増えてきました。自治体の方でも積極的に、相続登記において課税明細書の利用を呼び掛けているようです。
しかしながら、課税明細書を利用して、相続登記を申請することにはリスクがあります。なぜなら、一部の自治体では、固定資産税が非課税となっている被相続人名義の不動産を課税明細に記載しない自治体があるからです。また単純に非課税物件すべてを記載しない場合だけではなく、課税物件と持分が同じ非課税物件は記載するが、持分が異なる非課税物件は記載しないという取扱いの自治体もあるようです
従って、課税明細書を鵜呑みにして、相続登記を申請すると、非課税名義の不動産についてそ相続登記漏れを引き起こしかねません。
そして、相続登記漏れを解消するためには、再度遺産分割協議が必要ですが、他の相続人の理解が得られずトラブルになったり、相続登記漏れを発見するまで長期間を要したがために、二次相続が発生してしまうといった事も起こりえます。
このような事態を避けるためにも、課税明細書を相続登記に利用できる場合でも、必ず自治体に非課税不動産も記載する取扱いになっているか確認しましょう。記載しない取扱いになっている場合は、手間ですが評価証明書や名寄帳を取得しましょう
現行法上では、相続税の申告が必要な場合を除き、遺産分割協議をしないで放置しておくと数次相続が発生するというデメリットはありますが、いついつまでに遺産分割協議をしなければ
ならないというような期限はありません。しかし一部報道によりますと、遺産分割協議をすることができる期限を10年にしようと法務省が検討しているようです。
2018年頃に上記のような報道がなされましたが、2021年に国会に提出している「民法等の一部を改正する法案」では、遺産分割の期限を10年とする規定は盛り込まれませんでした。従って2021年4月現在においては、遺産分割協議に期限を設けられる可能性は、当分の間なくなりました。
しかし、改正案では、10年を経過後の遺産分割協議について特別受益や寄与分の制度は原則として適用されないという規定は盛り込まれました。この規定は、相続開始後10年を経過した場合の遺産分割協議については、特別受益や寄与分を考慮しないで、原則として法定相続分に基づいて行われることを意味しますので、当初検討されていた「10年を経過すれば、法定相続分で分割したものとみなす」という規定よりは大分後退はしましたが、従前よりデメリットが増えることには違いません。
一方、10年を経過しても、相続人全員の合意により、相続人の一人が全ての財産を相続するといった協議を成立させることは、遺産分割協議そのものを禁止する規定はないことから、従前どおり可能であることが可能であると考えられます。
以上が、遺産分割協議に関する改正案の内容ですが、この法律案が可決成立してもしなくても、遺産分割協議をせずに又はしても相続登記をせずに放置しておくことは、数次相続の発生を招くことにつながり、好ましくないことに変わりありません。
従って、相続が開始したら、原則どおり、速やかに遺産分割協議を行い、相続登記を行う事が重要です。
実印は、他の人が既に登録した印鑑以外の印鑑を登録しなければなりません。これは実印が、重要な契約等で、本人確認及び意思確認として使用されていることから、実印を複数人で共有することは望ましくないからです。
現に自治体によっては、明確にホームページ等で「実印の共有はできません」等の記載があります。
ただし、印鑑登録を各相続人がそれぞれ別日にすることによって、結果として印鑑登録できて
しまう事があります。
しかしながら当事務所においては、同じ印鑑を実印とした印鑑証明書をお持ちいただいても、
本人が押印したか疑念が生じることから、受付できず、再度別の印鑑で登録をお願いすることになりますのでご注意下さい。
受遺者が承諾すれば、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺言書と違う内容の協議になったとしても、その協議は有効です。
但し、受遺者の承諾は、必ず遺言書の内容を理解した上でしてもらわなければなりません。つまり、単に遺言書があるという事だけ知っているのではなく、遺言書によって受遺者自身が相続財産の全部又は一部を相続又は受贈できることを知ったうえで、遺産分割協議をしても良いという承諾を貰わなければなりません。そうしないと、遺産分割協議をしても受遺者から当該遺産分割協議は無効であると主張される恐れがあります。
また遺言書の存在を隠したまま、遺産分割協議を行うことは絶対に止めてください。後で発覚した場合、遺産分割協議の無効を主張されることはもちろん、故意の遺言書の隠ぺいは、相続欠格事由にあたり、相続人の資格も失うことになります。
相続権は相続が開始する前に放棄することが出来ません。相続権をあらかじめ放棄することができるとすると、被相続人が生前、推定相続人に放棄するよう強制したりする恐れが生じるからです。
従って、被相続人の生前中に推定相続人が放棄したことを証する書面があったとしても、当該書面を用いて相続登記をすることが出来ません。
一方、遺留分は、被相続人の生前中に放棄することが出来ますが、上記のように遺留分の放棄を迫ったりすることを防ぐために家庭裁判所の許可が必要です。この許可に当たっては、遺留分相当額の援助がなされている等の事情が必要であり、そういった事情が無い場合は許可を得ることは困難ですのでご注意ください。
今回は、相続手続き全般に係るテーマです。相続が発生すると、いきなり他の相続人から遺産分割協議書等が送付されて署名及び実印で押印し、印鑑証明書等とともに返送を求められるケースがあります。このような場合どのように対応すればいいでしょうか?実は対処方法は以外と
シンプルで、下記の3つのポイントを守って対処すると良いでしょう。
①送られてきた遺産分割協議書の内容をしっかり確認する
→特に重要な点は、誰がどの財産を取得するかを確認する事です。ほとんどの場合
きちんと、列記していますが稀に以下のような文言もあります。
「1.下記の相続財産を含む全ての相続財産を、相続人A が取得する
奈良県天理市〇〇町〇〇番 宅地 100㎡ 」
上記の文言のような場合、相続する財産は列記されたものだけではなく、
全財産になりますので注意しましょう。
②不明な点・または不満がある場合は、相手にしっかり伝える
→遺産分割協議書に不明な点や不満な点がある場合は、安易に署名・押印せずに相手
にしっかり伝えましょう。一度署名・押印してしまうと遺産分割協議の内容を解除
することは出来ませんので、注意しましょう。
③納得いかなければ、署名押印しない
→②と重複しますが、送られてきた遺産分割協議の内容に納得いかなければ、署名
押印しないでおきましょう。署名・押印しなければ原則として名義変更はされません。
但し、署名・押印しなければ、相手方が裁判を起こす可能性があります。そのような
場合、相手方との人間関係は完全に破壊される恐れが高いです。
そのような事態を避けたい場合は、譲歩できる落としどころを決めておいた方が良い
でしょう。
このように、他の相続人から遺産分割協議書が送られてきた場合は、慌てず上記の3つのポイントを守って対処しましょう。
相続税においては、被相続人の配偶者が遺産分割又は遺贈等によって取得した実際の財産につき、以下の金額のいずれかの多い額については、非課税とされています。
①1億6000万円
②配偶者の法定相続分相当額
ただし、自動的に配偶者が取得した財産について非課税の措置が適用されるわけではなく、期限までに相続税の申告手続きをしなければなりません。詳しい手続きについては、以下のサイトを参照してください。
〇配偶者の税額の軽減(タックスアンサー)→こちら
なお、あくまでも上記の制度は、相続税の軽減ですので、相続財産が基礎控除額の範囲内に収まるよう場合は、そもそも相続税が課税されませんので、税金の軽減目的で配偶者の名義にするという遺産分割協議を成立させても意味がありません。
また、相続税が課税される場合でも、軽減目的で全ての相続財産を配偶者の名義にすることは以下のようなリスクがありますので、慎重に検討されたほうがいいでしょう。
まず、第一に、配偶者が認知症等になり意思能力がなくなるリスクです。相続財産を全て配偶者名義にしていますので、相続財産を処分する場合、当然所有者である配偶者の意思能力が必要です。しかし、高齢化社会の今般、遺産分割当時は元気でも、数年たつと、認知症を患い介護が必要となるケースは、多々あります。このような場合、成年後見制度(後見人等に選任されるのは弁護士等の専門職で親族が選任されるのは稀です)を利用しないと処分できません。
また、成年後見制度は本人の財産の減少を防ぐための制度ですので、不動産や家の購入費の生前贈与はもちろんできませんし、冠婚葬祭費(入学祝、結婚祝い)等の支出も制限される場合があります。
次に、配偶者が死亡した後に、相続争いが起こるリスクです。相続争いの中には、親(被相続人及び配偶者)が存命中は、親が重しとなり、相続分を主張できなかった相続人が、親が亡くなったことにより主張できるようになった事が原因であるケースがあります。従って、相続財産を全て配偶者名義にすることは、一人っ子である場合を除いて、将来の相続争いのリスクを
先送りする事であると注意してください。
相続人の中に養子がいる場合、民法上の取扱いと税法上の取扱いが異なりますので注意が必要です。民法上では養子は相続人になります。ですので、例えば、被相続人に養子が5人いた場合、5人全員が相続権を有します。しかし、税法上つまり、相続税の基礎控除に関してはすべての相続人が相続人として算入されるわけではありません。被相続人に実子がいるかいないないかによって、以下のように基礎控除として算入される相続人の数に制限がかかります。
①実子がいない場合→養子のうち2人まで
②実子がいる場合→養子のうち1人まで
とこのようになってきます。なぜこのような制限になっているかというと相続税の基礎控除にあります。相続税の基礎控除は
3000万円+(600万円×法定相続人の数)=相続税の基礎控除
となっています。つまり上記①及び②の制限がないと、例えば配偶者と実子が一人いるというような被相続人が生前に10人と養子縁組をし、本来の基礎控除が4200万(3000万+(600万×2))なのに、1億200万(3000万+(600万×12))に基礎控除を
拡大させるといったような、養子縁組制度を節税の道具に使うというようなことが横行しかねないからです。
従って、養子縁組は、相続税対策にはあまり効果はありませんので、孫や子供の配偶者等に相続権を与えたいというような事情を除いて、むやみにすることはお勧めできません。
なお養子でも、特別養子縁組制度で養子となったものについては、実子扱いとなり、上記①及び②の制限に関わらず算入されます。
なお、特別養子縁組は家庭裁判所の許可が必要で、戸籍にもその旨が記載されますので、戸籍をみれば特別養子縁組制度による養子かどうか一目で分かります。
相続人の中に相続放棄した人がいる場合、養子がいる場合と同じく、民法上の取り扱いと税法上の取り扱いが異なっています。民法上では、相続放棄した人がいる場合、放棄した者は最初から相続人でないものとして取り扱われます。例えば、相続人が妻、長男、次男のケースで、次男が相続放棄した場合、相続人は妻、長男のみとなります。一方相続税の基礎控除の算定に当たっては、相続放棄があっても、相続放棄がなかったものとして取り扱います。従って先ほどの例では、算定される相続人は3人となりますので、基礎控除は4800万円となり、相続放棄したからといって基礎控除額は減少しません。
では、被相続人に配偶者も子供もなく、直系尊属は父一人だけで、兄弟姉妹が他に5人いるケースで父が相続放棄した場合はどでしょうか?
この場合、民法上の規定では、父が相続放棄したことによって、相続人が次順位の兄弟姉妹に移り、兄弟姉妹5人が相続人となります。一方相続税の基礎控除では、相続放棄があってもその放棄がなかったものとして取り扱いますので、算定される相続人は一人(父のみ)となり、3600万円のままで、5人(兄弟姉妹)の6000万円とはなりません。
つまり、相続放棄によって、民法上の相続人の数が増えても減っても、相続税の基礎控除では、変動しないという事になります。これは相続放棄することによって、相続人を増やし相続税の負担を意図的に軽減するという行為が横行することを防ぐ目的があります。
(注)ここでいう相続放棄とは一定の期限内に家庭裁判所に申述して行う相続放棄の事を指し
ます。世間一般では遺産分割協議によって財産を受け取らないことに同意することにも
放棄という言葉が使われますが、ここでいう相続放棄にはあたりません。
相続人の死亡により支給される死亡退職金は、民法上では、相続財産に該当せず、受け取る遺族固有の権利と扱われます。従って、遺産分割協議する必要は当然ありませんので、会社の規定によって定められた受取人が受け取ることになります(なお、被相続人が生前に退職し退職金を受け取っていた場合は、相続財産となり遺産分割協議の対象となってきます。)
一方、相続税の場合は、死亡退職金は相続財産とみなされますが、相続人が受け取る場合は、死亡退職金が相続人の生活保障目的でしているとかんがえられているためか、全額が課税対象となるわけではなく、一定の非課税枠が設けられています。具体的な死亡退職金の非課税枠の計算方法は次のとおりです。
死亡退職金の非課税枠=500万×法定相続人の数
例えば、相続人が妻と子供2人で、死亡退職金が妻に1000万円支給された場合、非課税枠が1500万円(500万円×3)ですので、相続税は課税されません。
一方、相続人以外の者(内縁の配偶者等)が受け取った場合には、この非課税枠制度は適用されませんのでご注意ください。
4市街化区域外における一部の土地について、平成30年(2018年)11月15日から令和3年(2021
年)3月31日までの間に相続登記をすると登録免許税が非課税となる制度が導入されています。
制度の概略は以下の通りです。
〇対象の土地
市街化区域外で法大臣が指定する不動産の価額が10万円以下の土地
→主に市街化調整区域となりますが、市街化区域と市街化調整区域と線引きがされて
いない自治体等では全域指定されています。詳しくは各法務局のホームページで
公表されていますのでご参照ください。
→建物は対象ではありません。
〇不動産の価額が10万円以下とは
①不動産の価額とは、原則として対象不動産所在の自治体が認定する固定資産評価額が
10万円以下のことをいいます。
→但し、評価額がない土地(非課税含む)や登記地積と課税地積が異なる場合は
法務局の認定する価額が不動産の価額となります。
②相続登記を申請する各不動産が10万円以下ならば、合計で10万円を超えていても適用
されます。
→例えば、A不動産(10万円)とB不動産(10万円)の相続登記を申請する場合、合
計では20万円ですが、各不動産の価額は10万円以下なので、AB両方とも登録免許税
はかかりません。
③1筆の不動産の一部の持分を相続する場合は、当該持分に相当する価額が10万円以下なら
適用されます
→例えば、1筆の土地(価額20万円)の持分2分の1を相続する場合、持分に相当
する価額は、20万×1/2=10万円となり、10万円以下となるので、登録免許税は
非課税となります。
〇対象の相続は?
この制度は、令和4年(2022年)3月31日までに相続登記を申請することが要件となっ
ていますが、相続の開始年月日には制限はありません。従って、20年前、30年前、はも
ちろんの事、極端な例でいえば、100年前に開始した相続についても令和4年(2021年)
3月31日までに申請する場合は、非課税となります。
この制度は、市街化区域外の土地が対象となります。相続する土地が市街化区域外かどうか
分からない場合は、自治体の固定資産税課で、評価額だけではなく市街化区域か市街化調整区域かどうか記載される証明書を取得してください。
相続した不動産を売却したい場合、必ず相続登記(名義変更)しなければなりません。
では、いつまでに相続登記をしたほうがいいのでしょうか?売却を検討されている方の
中には、「相続登記をしても売却できなければ無駄になるので、買主が見つかってから
相続登記をしよう」と思っておられる方もおられるのではないでしょうか?しかしこの
ようなお考えには以下に述べる3つのリスクがあります。
①相続登記未完了の不動産は買主に敬遠されやすい
一般的に不動産をお探しの方の多くは、家庭や仕事の事情から、「〇月末までには住
みたい」というような期限を設けている事が多いです。従って、当然契約から引き渡
しまで短期 間で済むことが求められれます。この点、契約時点で相続登記未完了の不
動産は、契約してから相続登記をすることになりますので、相続登記完了済み不動産
に比べて引き渡しまで時間がかかります。また買主の立場からみると、相続登記未完
了不動産を契約するということは、契約後相続争いが勃発する等の事情が生じ、結局
契約解除しなければならないというリスクを負うことになります。
従って、これらの点から相続登記未完了不動産は、買主から敬遠されやすく、売却
しにくいというリスクが生じます。
②他の相続人から売却代金の相続分割合での分配を要求される。
契約してから相続登記をしようとすると、当然他の相続人に遺産分割協議書への署名
押印してもらわなければなりません。一度は、売主の名義にすると合意していた他の
相続人も、いざ実際に売却するとなると、心変わりし売却代金の相続分割合での分配
を要求される事態も起こりえます。しかも契約後の場合、一般的に、買主にいついつ
までに引き渡さなければならないという義務を売主は負っていますので、早期解決を
図らなければなりません。その結果、他の相続人の要求を呑まざるを得なくなり、手
元に入る売却代金が少なくなります。
③仲介会社紹介の司法書士に依頼せざるを得なくなる。
先ほども述べましたが、契約すると売主は、いついつまでに買主に対して、不動産
を引き渡さなければならないという義務を負うことになります。この時間的制約が
生じてくる関係上、相続登記を依頼する司法書士を探し、検討するということが出
来なくなり、結果として仲介会社紹介の司法書士に依頼せざるを得なくなります。
相続登記の費用を節約するために、司法書士を探したいという方にとっては、契約
後に相続登記をするというとはリスクがあるといえましょう。
このように、相続登記を売却が決まってからするということはリスクがあるということ
はご理解いただけたと思います。当事務所では相続した不動産の売却をご希望の方から
のご相談・ご依頼も受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。また地域
によっては、不動産会社のご紹介も可能ですので、不動産会社の紹介をご希望の方もお
気軽にお問い合わせください。なお相続による名義変更については以下のページもご参
照下さい。
相続による名義変更のページ→こちら
相続による名義変更は基本的に相続人しかできません。相続人以外の名義にしたいときは、相続人名義にしてから、贈与登記を申請します。具体的な流れは以下の事例を用いて説明します。
(事例)
〇Aが死亡し、相続人はB及びCのみで、Bには妻Dがいる。
〇A名義の不動産があるが、名義はDに変更したい。
①まずAからBへと相続登記が必要なので、戸籍謄本等必要書類を収集します。
↓
②戸籍謄本等の必要書類が揃ったら、遺産分割協議書等の書類を作成します。
↓
③遺産分割協議書にB及びCが署名及び押印します。
↓
④贈与登記に必要な書類を作成し、B及びDが署名・押印します。
↓
⑤相続によるB名義への所有権移転登記及びBからDへの贈与による所有権移転登記を連件申請
します。
↓
⑥ 完 了
なお、便宜上番号を振りますが、③と④は同時並行的にすることが多いと思われます。また相
続登記に添付する印鑑証明書には期限はございませんが、贈与登記に添付する贈与者の印鑑証
明書(上記の例だとB)は3か月以内の有効期限がございますので、お気を付けください。
被相続人や相続人の本籍地が現住所地から遠方にある場合でも、郵送による請求ができます。
この郵送による場合、普通郵便でも速達郵便のどちらでも出来ますが当事務所としては速達
郵便でされることをお勧めいたします。というのも普通郵便できたものよりも、速達郵便で到着した方を優先的に処理する自治体が多いからです。実際に当事務所が取り扱った案件でも某自治体に、「速達なら到着した翌営業日に処理し返送するが、普通郵便の場合は、発送から
返送が到着するまで2週間程度かかる」と言われたことがあります。
このように普通郵便で戸籍を郵送請求すると想定外に時間がかかりますので、特に急いでおられる方は避けた方が良いでしょう。
原則として1回はご面談によるご相談が必要ですが、面談後のお手続きは郵送及びメールでのご対応が可能となっております。実際に当事務所にご依頼されたほとんどの方は1回の面談で、その後のお手続きは郵送で完了しております。
しかし、面談後に、予期せぬ相続人が判明した場合、遺産分割協議に変更が生じた場合等の事情が生じた場合は、再度面談をお願いする必要がありますのでご了承ください。
(注)平日の日中にお仕事等で都合がつかない方は、お気軽にお申し出ください。日時調整
することも可能です。
最近始まった相続手続きの軽減を図る制度として、法定相続情報証明制度があります。これは
管轄の法務局に、自ら作成した法定相続情報一覧図(以下「一覧図」とします)に被相続人の出生から死亡までの戸籍及び、全相続人の戸籍等を添付して保管の申出をします。次に法務局は提出された戸籍を調査し、一覧図の記載が正確ならば、一覧図の写しに認証文をつけて申出人に交付します。この一覧図の写しを戸籍の代わりに、各種相続手続きにおいて使用できるというものです。従ってこの制度は以下のような場合にメリットがあると言えます。
〇相続財産の種類が多い場合
〇相続手続きを同時並行で行いたい場合
〇相続税の申告をされる方
→相続税の申告では戸籍の原本還付できないため
しかし、この制度を利用しても各相続人の印鑑証明書は各手続に必要になることに変わりありません。従って相続手続きを同時並行で進めたい場合、各手続ごとに印鑑証明書を用意する必要があります。この際に、他の相続人(財産を取得しない相続人)に複数の印鑑証明書の取得をお願いする際には注意が必要です。通常ほとんどの相続手続きは急がなければ、必要書類は各1通取得すれば使いまわしができ、複数取得する必要がないかいらです。他の相続人にとっては、財産を取得しないにもかかわらず、手間及び費用をかけて印鑑証明書の取得をしなければなりません。またいくら親族とはいえ、印鑑証明書を渡すことに抵抗を覚える方も多いです。にもかかわらず単に「印鑑証明書を〇通取得してくれ」というような説明では、他の相続人の気分を害したり不信感を与えることにもなりかねません。最悪の場合、相続手続きに一切協力しないということにもなりかねません。
このほかにも、法定相続情報一覧図の写しの交付制度を利用される場合は、メリットだけではなく注意すべき点がたくさんありますので、ご検討される方は一度専門家に相談することをお勧めいたします。当事務所でも法定相続情報一覧図の写しの交付制度のご依頼・相談を随時受け付けていますのでお気軽にお問い合わせください。
(この記事は、司法書士が一般論として書いています。個別具体的な事例については、必ず管轄の税務署や税理士にご相談ください)
一旦、遺産分割協議が成立した後で、協議内容に不満があるためやり直ししたいと思ったときに遺産分割協議のやり直しができるのでしょうか?
この点につき、判例では、相続人全員の合意があればやり直しすることができるとされています。しかし、有効に成立した遺産分割協議をやり直しで財産を譲渡した時に、税務署から贈与と判断されて、贈与税が課税される場合があるので、要注意です。
特に、相続税を申告し納付している状態だと、税務署は、最初の遺産分割協議によって各相続人が相続した財産を把握していますので、その後のやり直しに伴う財産の移動を原則として贈与と判断するようです。
このように、遺産分割協議のやり直しには、相続人全員の合意が必要であり、かつ贈与税の課税の恐れもありますので、なるべく避けた方が良いでしょう。そのためにも、十分に協議内容を検討したうえで、遺産分割協議を成立させましょう。
遺産分割の方法の一つとして、換価分割というものがあります。これは相続財産を売却して、経費を除いた換価金を相続人に分配するというものです。例えば遠方の実家の土地建物等、単独で取得することを希望する相続人がいない場合等に利用されることが多いです。
換価分割を採用する場合でも、売却するためには、相続登記が必要となってきます。この時に、単純に法定相続分どおりに相続登記をしてしまうと、決済の時に、全相続人が集まらないといけならず、相続人が多い場合や、多くなくてもそれぞれ遠方に住んでいる場合は、日程調整が困難になったり、決済場所への交通費が高くなるという不都合が生じてしまいます。そこで実務では、
〇相続人の内一人を代表者と決め、代表者名義にする方法
が多く採用されています。この方法では代表者一人が決済場所に行けば良く、全相続人が集まる必要はありません。また分配金に贈与税が課税される恐れがあると心配される方もおられるかもしれませんが、遺産分割協議書に換価分割の内容を記載しておけば、贈与税を課税しない
という取り扱いを採用しているようです。当事務所は税理士事務所ではないので、確実に贈与税が課税されないとは言えませんが、現に当事務所で取り扱った換価分割の案件で、贈与税が課税されたという事例はありません
遺産分割の方法の一つとして、代償分割というものがあります。これは相続人の一人が特定又は全部の相続財産を取得する代わりに、他の相続人に対して、相続分に相当する額を、相続人固有の財産で支払うというものです。例えば、相続財産が1000万円の土地のみで、相続人がA、Bの子供二人のみであった場合に、Aが相続財産の土地を取得する代わりに、Bに現金500万円を支払うといった内容の遺産分割協議が当てはまります。
この代償分割は、上記のように相続財産が現物分割することが難しい財産である場合や、相続財産が相続人の自宅の敷地である等の、相続人の名義にすることが必要不可欠である場合等に適した方法といえます。
代償として他の相続人に渡す財産には特に制限はありません。従って、相続人の固有財産の不動産を渡すことも可能です。この場合は、「遺産分割による贈与」を原因として所有権移転登記手続きを行います。この登記にかかる登録免許税は2%で通常の相続登記の際の登録免許税の税率(0.4%)よりも高くなることに注意が必要です。
また代償分割の方法をとる場合、遺産分割協議書にその旨を記載しなければなりません。記載しなければ、税務署に通常の贈与とみなされ、他の相続人に贈与税が課税される恐れがありますので注意が必要です。
相続法改正によって、配偶者居住権が創設されました。この配偶者居住権ができた背景には、今までは、相続財産が自宅のみ又はほとんほとんどを自宅が占めるといった場合に他の相続人が相続分を主張した時には、自宅を売却したり又は自宅のみを相続し、その他の金融資産を相続することを諦めたりしなければなりませんでした。その結果、残された配偶者の生活が困窮するといった問題が起こっていました。
そこで、残された配偶者の居住権の保護の観点から、残された配偶者が原則として、無償で自宅に亡くなるまで(終身)住むことが出来る権利を創設しました。それが配偶者居住権です。この配偶者居住権の評価額は自宅の所有権の評価額よりも低い傾向にありますので、他の相続財産を多く取得することが可能となる場合があります。以下の例で説明します。
(例)被相続人→A(夫) 相続人→B(妻)、C(子)
相続財産→自宅(2000万)、預貯金2000万のみ
配偶者居住権の評価額 金1000万円
①従前(配偶者居住権創設前)の場合
→B及びCの相続分が各2分の1ずつのため、BはCが相続分を主張した場合
自宅か預貯金のいずれかしか取得できない。つまり自宅を相続したとしても
預貯金を一切相続できないため、Bには金銭面での不安が残る。
②現在(配偶者居住権創設後)の場合
→Cが相続分をしゅとくしても、Bは自宅については配偶者居住権を取得するこ
とによって、預貯金1000万円を取得することが出来る。この場合の配分は
以下の通り。
妻B→配偶者居住権(1000万円)+預貯金1000万円=2000万円
子C→配偶者居住権付き自宅(1000万円)+預貯金1000万円=2000万円
いかがでしょうか?このように配偶者居住権を利用すれば、自宅に住み続けることができ
なおかつ預貯金もある程度相続することが出来る事が可能となる場合があるのです
配偶者居住権を取得するメリットは、自宅等の不動産が相続財産に占める割合が高い場合に活きてきます。例えば以下のようなケースです。
(例)相続人→妻及び子の二人のみ
相続財産→自宅(時価2,000万円)
預貯金2,000万円
妻及び子の法定相続分
各2000万円
上記の事例で、妻及び子供が法定相続分通りで分割する事になった場合、妻は自宅か預貯金どちらかしか選択できません。自宅を選択した場合、預貯金を一切相続できませんので、今後の生活に不安を残すことになります。一方預貯金を選択した場合、住み慣れた自宅を出ていかなくてはなりません。そこで、配偶者居住権を利用する事によって、妻が自宅に住み続けることができ、かつ預貯金の一部を取得する事も出来ます。これは、配偶者居住権の評価は、所有権の評価よりも低いからです。
先ほどの事例で、仮に配偶者居住権の評価が1,000万円だだったとしましょう。
この場合、妻が配偶者居住権を取得したとしても、本来の法定相続分2,000万円の内、1,000万円しか相続していないことになります。そして、相続していない1,000万円を、預貯金で相続する旨を主張すれば、自宅に住みながら、預貯金の一部も相続できることになります。以上、配偶者居住権のメリットについて記載してきましたが、
メリットがあれば当然デメリットもあります。デメリットについては別の記事で記載します。
相続が開始し、相続人が親権者(被相続人の配偶者)とその親権に服する未成年者(被相続人
及び親権者の子)である場合において、遺産分割協議をするためには、特別代理人の選任を家
庭裁判所に申立てしなければなりませんでした。なお相続開始時に未成年者であっても、遺産
分割協議の際に成人している場合は、特別代理人選任の申立てをすることなく当事者間の協議
ですることができるため、相続開始時に未成年者が19歳の場合、相続税の申告等を急いでし
なければならないという事情がなければ、成人になるのを待って、遺産分割協議を行う事もよ
くおこなわれています。さて、令和4年(2022年)4月1日から成人年齢が18歳に引き下げら
れます。引き下げ以降は、上記の遺産分割協議においても、相続人が18歳以上であれば、特別代理人の選任の申立てをしなくてもよくなります。これは、現在すでに発生している相続につ
いても、引き下げ以降に遺産分割協議をする際にも適用されます。
従って、現在発生している相続について、16歳、17歳の相続人がいる場合急いで相続登記をしなければならない事情がない限り、令和4年(2022年)4月1日以降に、当該相続人18歳以上になるのを待ってから、遺産分割協議を行う事を検討しても良いかもしれません。なおその際には相続登記の義務化の施行状況も併せて確認してください。